評価制度

これからの評価制度の課題⑤
~自社の競争優位性を生む源泉となるように運用する~

評価することが難しいプロセスにこそ競争の優位性の源泉が潜んでいます。業績結果での人事評価は明解で、文句も出ませんが、それだけでは企業の存続や発展は望めません。

  • 管理者が人事評価をもっと理解すれば自分の役割がより明確になる
  • 管理者が企業の競争の優位性を確立する
  • 評価が見えにくい、評価がしにくいものの中にこそ競争の優位性がある

管理者が人事評価をもっと理解すれば自分の役割がより明確になる

会社の業績は社員一人ひとりのアクションが創出するものです。そのアクションがより良いものになることを、常日頃から社員全員が心掛けなければなりません。

一方、人事評価は日常の人材マネジメントの集大成だと言われます。人事評価があるからこそ、管理者の日常の人材マネジメントが変わり、社員のアクションがよりよいものになっていくのです。

つまり管理者とは、「人事評価を日常のマネジメントに落とし込み、部下のアクションをより良くする人」なのです。

管理者が企業の競争の優位性を確立する

管理者の中には「人事評価はシンプルなものがいい」というような意見(不満)を持っている人が多くいます。

なぜなら、その方がフィードバックにおいても部下と揉めないで済むし、部下も納得しやすいから・・・と。だから「業績数値で人事評価を決めたらよい」という声もよく耳にします。

確かにこれらの意見は一理あります。複雑すぎる人事評価は結局その意図通りに運営されないからです。

また業績数値は経営レベルで決定された後に部門、個人という形で降ろしていけば評価基準としての目標は明確になります。そして業績数値はその結果も明解で、達成率もはっきりします。達成率で評価尺度基準をあらかじめ決めておけば、管理者の人事評価の能力が高かろうが低かろうが、自動的にSだのCだのと評価結果がはじき出されます。

部下側からもこの過程はすべて見えるので、上司としての評価者の判断に不満を持つ部下はほとんど出てこないでしょう。

このような意見に対して、「管理部門はそもそも業績目標がないのでそんな運用は無理だ」と言って、反対する人も多くいます。しかし、実は、それ以上にこの「もっと簡単にせよ」「数値結果で評価すればよい」という意見に、すんなり従ってはいけない理由があるのです。

評価が見えにくい、評価がしにくいものの中にこそ競争の優位性がある

今の時代、企業の競争力の源は「人材の質」になってきています。業績結果を評価するだけで、その結果を生み出すための「プロセス」を評価するという発想がないと、社員のアクションの質が変わらず、競争優位を作り込めません。

確かに業績数値は会社にとってとても重要なものであり、かつそれを評価するということはわかりやすく簡単であるかもしれません。だから当然、どの会社でも人事評価の重要なものの一つとして組み入れているはずです。そこに競合他社の人事評価との違いはありません。

ですから、むしろ自社にとって、「重要であるが、わかりにくく、かつ評価が簡単ではない」というアクションを人事評価に組み入れなければ、他社に対しての競争優位性を実現できないのです。逆にしっかりと、人事評価にそれを組み入れれば、社員のアクションが変わり、競争優位性の実現につながるのです。

「重要かつわかりにくく、評価が難しい」と言われるものとは、

  • 能力の評価

  • 情意の評価

  • 価値ある行動の評価

  • 成果評価の定性評価部分
    ▶業績数値目標以外の定性目標部分(アウトプット目標や進捗目標)
    ▶日常業務の成果
    ▶組織貢献度評価

などです。
これらは、業績数値目標に比べれば曖昧な部分が多いのですが、その曖昧な部分の評価のやり方を管理者が学習し、工夫することは能力開発や活力アップにつながり、業績向上のためのケイパビリティーや固有の業務プロセスを発見することにつながります。その結果、競争の優位性が確立され、業績の向上につながっていくのです。

今後どのような経営環境の変化があっても、社員のアクションが会社の業績を生み出すことに変わりはありません。

そのためには、日常の人材マネジメントの質の向上が欠かせません。管理者が人事評価を、日々の人材マネジメントに活用し、その能力を高めることが、企業の競争力の源泉になるのです。

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