評価制度

これからの評価制度の課題③
~【OKRブームの背景】OKR導入のメリット~

「OKRは目新しいものではない」という意見もありますが、導入し、愚直にそれを実行することで、従来のように目標管理と評価を結びつけなくとも、「自主性」や「一体感」、「チャレンジ精神」などをメリットとして、確実に手に入れることが出来ます。

  1. OKRの本質
  2. OKR導入で得られるメリット

1.OKRの本質

昨今、経営者と従業員は「主従関係でなく対等な関係であるべきだ」という考え方が当たり前になってきています。従業員は「単に与えられた目標を達成する人」でなければ、「なぜその目標を達成しなければならないのか?」が理解できないような「愚か者」でもありません。組織の共通の目的に共感し、その目的を達成するための「パートナー」です。この考え方を実際に企業内で体現する上でOKRはひじょうに有効な手段です。

OKRはこれまでにない斬新な発想ではありません。「会社の目指すもの」と「各部署や個人でやること」を連鎖させて目標を達成しよう!という、ごく当たり前のことを仕組みにしたものです。全社→部門→個人の全ての目標が連動しており、各目標間の因果が理解しやすく、社員各自が、目的達成に向けたパートナーとして自身の目標に納得し、集中することを可能にします。これがOKRの最大のメリットです。

2.OKR導入で得られるメリット

社員が「パートナー」として意欲的に仕事を行うことが可能になるだけでなく、OKRを導入すると他にも大きなメリットを得ることができます。

経営幹部の意志決定のスピードや決断力が磨かれる

経営環境が大きく変われば、一旦掲げた経営戦略、それに連動した部署や個人の目標も、思い切って変えなければ、変化に適応できず、その結果業績は悪化します。

しかし現実には、経営環境の変化を目の当たりにしても、戦略変更の決定がなぜか出来なかったり、そのスピードが遅かったりして、業績悪化に追い込まれる企業も多くあります。「変える・変えない」「捨てる・捨てない」「止める・止めない」これらをスピーディーにかつ思い切って出来ることが、今の時代で生き残る、あるいは勝ち組になる大きな条件かもしれません。

OKRは、もともと「会社及び部門や個人の目標の変更を是とする」という従来の目標管理とは全く違う考え方に則った、変更への対応が柔軟に出来る仕組みです。

それを導入しているにもかかわらず、経営幹部が、「変えたらまた最初からOKRを組みなおさないといけない」などと言って躊躇していると、かえって社員から、「うちの経営幹部には決断力が無い」「意意思決定が遅い」「結局全社目標はお題目に過ぎない」などと思われ、しいては、働く意欲や信頼感の低下を、招いてしまいます。

逆に、OKRの教え通り、速やかに、目標の変更や、それに伴う部門や社員の変更を指揮しようとすること自体が、経営幹部の「意志決定力」そのものであり、それは、その「スピード感」は社員の目には上記で述べたことと正反対のこととして映り、意欲減退や不信感の増幅には繋がりません。

このように、OKRの教えを愚直に行うこと自体が、会社の「意志決定力」や「スピーディーな判断力」を磨いていくことになるのです。

対部下との1on1に魂が入り、社員同士の協調心や成長意欲が高まる

OKRは個々の目標の定量化・定性化がきっちりされますが、それよりも一番きっちりされるのが、上下左右、組織と自分等の各目標同士の因果関係です。

ですから、どこかの目標が未達成になるとどこかの目標も未達成になるということを全員が自覚しています。「誰かの目標未達成は対岸の火事」ではないのです。

ですから、従来の目標管理においても、1on1(面談)が半期や期末などに状況に関係なく定期的、悪く言えば事務的に行われていましたが、OKRにおいての1on1は、前述のように「対岸の火事」では済まないという、本気の支援、アドバイス、指導というスタンスの、いわば魂の込もった1on1になります。この1on1を通じて組織に協調心が芽生え、結果それをベースにして各自の成長意欲も高まるというのが、OKR導入のメリットです。

OKRはその達成結果を人事評価と結びつけません。よって、社員が高い目標にチャンレジ出来て、結果社員が成長するのは事実です。しかし、その結果個、が成長して、組織がバラバラになるのでは意味がありません。OKRの「目標の連鎖」による一体感が、「まとまりを保ちつつ各自も成長する」というこの難しい課題をも解決するのです。

社員の自主性が高まる

会社の目的(ミッション)が好きで、それを達成することに共感する人たちが集まっているような会社では、トップが最初に全社の目的や目標を決定し、それに向かって次に各部門、次に各個人が決定するというOKRの運用が適しており、逆に各自や各部門が事業家精神旺盛で、それを会社が支援するような考え方の会社ではボトムアップ的にOKRを運用することが望ましいと言われています。

よく、「OKRのトップダウン的運用は社員の自主性の芽を摘まないか?」という意見がありますが、それは誤解です。

「トップの目標を受けて自部門は何をすべきか?」「自部門の目標を受けて自分は何をすべきか?」と考えて目標を創作すること自体が、「組織の中で自律すること」だからです。いわば、OKRで自分の目標を考え、設定すること自体が、「自主性」の発揮なのです。OKRはまさに、社員に自律を自覚させ、自主性発揮を促すツールなのです。

社内のコミュニケーションが良くなる

「期待理論」(ビクター・ブルーム)は、「人はそれをすることで得られる結果への期待値とその行為によって得られる報酬の魅力によってモチベーションが決まる」ということを、証明しています。

これによれば、OKRは「この目標を達成すれば目的にいける」「この目標を達成すれば次はこんな段階に進める」という点が明確になるので、モチベーションが高まらないはずはありません。

しかし、いくらOKRを導入しても、

  • 経営やマネジャー、あるいはメンバーが周囲に何を目指しているか、部門が何を目指しているか?その目的、ゴール、意義、メリットなどを自分の言葉で説明する

  • その後質疑応答を行って、合意形成を図る

  • 目的に向かっての目標(戦略や戦術)が実現可能なものであるかを、予想される障害やその対策などの説明と質疑応答を通じ、全員の効力感につなげる

という、OKRで必要な「説明責任」を各自が果たさなければ、道筋が見えず、希望も持てず、結果、モチベーションのアップには繋がりません。

逆に言えば、OKR導入によって、この説明責任を果たそうという過程で、各自の説明力、いわばコミュニケーション力がより磨かれ、しいてはそれが組織全体の一体感と同時に、目標達成意欲の醸成に確実に繋がっていくのです。

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