教育体系

2021新入社員配属後OJTのポイント
~新入社員の早期戦力化を願って~

 

「今年の新入社員はどんな言動傾向があるか?」
「その傾向の背景に何があるのか?」
「新入社員配属後のOJTで留意すべき点は?」
「配属先の先輩・上司は新入社員とどのように関わったら良いか?」

今回は、新入社員研修を担当した実感情報をもとにお伝えします。新入社員の早期育成離職リスク低減の参考にしていただければ幸いです。


1.新入社員研修で感じた今年の傾向とその背景

仲間が恋しい ソロキャンプタイプ(産労総合研究所発表)」と呼ばれる2021年新入社員には、どのような傾向があるか? その傾向の背景に何があるか? 今年の新入社員研修を担当して感じたことをお伝えします。

3月下旬~4月下旬まで、オンライン研修、リアル集合研修合わせて10社の研修を担当しました。その10社で感じた傾向です(当然個人差があり、全ての会社の新入社員がそうだというわけではありません。その点、お含みおき下さい)。

 

傾向1:及第点主義

これぐらいでいいだろう」発想が強い。この発想をひきずったまま現場配属されると、仕事の手を勝手に緩めてしまうかもしれない。

ビジネスにおける成果は、相手の期待をどれだけ超えるかで決まります。期待を超えた分が相手の満足であり、組織の利益になります。期待通りの働きでは相手にとっては“当たり前”であって、満足にはつながりません。

「これぐらいでいいだろう」という自分勝手な基準で仕事をしたのでは、相手の期待を超えることはなく、顧客満足も組織の利益も得られません。

私が担当した新入社員研修でも、研修課題(ビジネスマナーの習得テスト)の合格率が60%を超えた辺りから練習ペースが失速し、テストへのチャレンジ回数が減少していきました。「60点取れたらOKだろう」という勝手な決めつけがあるようです。

背景には、彼らが学生時代に身につけた処世術があります。

落第点を取らなければ(ギリギリでも単位が取れれば)OK」、「(自分よりも成績が下の友人と比較して)彼よりもマシだから大丈夫」というものです。

ビジネスの世界では「学生時代に通用した処世術は、自分の首を絞めることになる」「自分が及第点だと思い込んでいることは、相手目線では落第点」ということを、入社後の早い段階で気づいてもらう必要があります。

 

傾向2:抽象度の高い精神論で落ち着かせようとする傾向

目上の人から精神論を言われることを嫌うくせに、自分では精神論を言う。「精神論を言っておけば、それ以上の突っ込みを回避できる(精神論は最大の防御なり)」という発想がある。

新入社員(若手社員も同様)は「精神論とか、根拠に欠けるし、重いし苦手、モチベーション上がらない」と言う人が多いです。そのくせ、研修課題をクリヤーできない理由に、「モチベーションが足りない」「気合が足りない」「社会人としての自覚が足りない」と言います。

新入社員研修では、1日の終わりに活動(業務)を振り返ります。振り返り場面では、「成果はあったのか? その原因は? 今後に活かすことは?」を整理させます(PDCAサイクルのCAです)。

Checkの内容が「社会人としての自覚不足」「認識が甘かった」「気合不足」。
Actionの内容が「自覚を持つ」「強い認識を持つ」「気合を入れる」と。
いかにも観念的・抽象的過ぎます(この傾向は年々強くなっているような気がします)。

できたこと・できなかったことの事実を具体的に振り返り、今後の行動をどう修正したら良いかを言葉にし、相手に分かるように説明する必要があります。しかし新人は、この説明を尽くさずに、抽象度の高い精神論で落ち着かせようとする傾向があります。

人間誰でも、至らない自分と向き合うことは楽しくないし、他者からの突っ込みは回避したいと思うものです。それ故、他者から突っ込まれる(叱られる)リスクをいかに最小限に留めるかに、知恵を働かせてしまうのだと思います。その結果、精神論で落ち着かせようとする傾向が表面化しているのだと思います。

精神論が全て悪いわけではありません。精神論は、背中を押すパワーを与えてくれます。励まし合う、勇気づけるために精神論が有効であることは否定しません。

ただ、安易な精神論に落ち着いてしまうと成長の機会を失ってしまうリスクがあります

配属先で新人に「OJT日報(週報)」を書いて提出させ、新人と育成担当者(OJTリーダー)が対話する、という仕組みを取り入れている組織もあると思います。その際、具体的事実を振り返らずに精神論を書いてくる新人には気を付けてください。育成担当者(OJTリーダー)が精神論好きだと、新人はますます精神論に逃げ込む悪循環に陥ります。

 

傾向3:表情乏しい「お疲れモード」

コロナの影響で自粛疲れ? 表情が乏しく、元気・覇気がないように見える。

元気がない・大人しいのは、ここ数年の傾向です。以前は緊張や不安が起因して元気がないように見えていましたが、今年は少々様子が違います。3~4月の研修で出会った新人で体調不良者は1人もいませんでした。身体は元気なはずなのに元気がないのです。

マスクをしていることも影響していると思いますが、表情が乏しい

リアル集合研修であっても、休憩中も座席の近い人とだけ話し、洗面所で手洗い・うがい・消毒を済ませると、寄り道せずに席に直帰するので、同期の交流も少ない。

コロナ対策で「大きな声を出すのは控えろ」「必要最小限の会話にとどめろ」「人との接触を減らせ」と行政・学校・会社から言われ続けた結果なのかもしれません。

新人の元気・覇気を引き出そうと、講師自身が努めて元気にハキハキ振る舞うのですが、熱が伝わるのに時間がかかりました(昨年よりも)。

背景としては、いろいろと自粛を強いられてきたことがあるようです。新人に話を聞いてみると・・・・、授業はオンライン。学校に行かないから誰にも会わない。オンライン飲みも企画するが、全員と話せるわけではなく常に不完全燃焼。就職活動は、説明会がオンラインで説明が長いと頭に入ってこないまま、とりあえずエントリー。本当にこの会社で良かったのだろうか?と疑問を抱きつつ入社しているかもしれない自分に不安になる。卒業旅行を断念せざるを得なかった・・・・。

様々な面で感情を抑圧され、モヤモヤ感を溜め込んだまま入社した、という背景があるのかもしれません。

配属先では、こういった事情を理解して、寄り添ってあげる必要がありそうです。


2.新入社員の育成スタートは「育成体制づくり」から

私が新入社員研修を担当していて、意識していることは、新人が現場配属された時に、現場がどんな受け入れ方をしてくれるか?です。

新入社員の多くは入社した日から漠然とした不安を抱えた状態が続いています。彼らの不安を少しでも解消し、安心して働ける(成長できる)環境は組織全体で整備していく必要があります。最初が肝心です。「受け入れ」で失敗すると、成長速度が鈍化、離職につながりかねません。

まずは「育成体制づくり」が重要です。ここで言う育成体制とは、育成担当者(OJTリーダー)選定、育成プラン、育成ツールの整備だけではありません。これらはほんの一部です。体制づくりの肝は、部署内外における「連携」のあり方を関係者で合意することです。人材育成部門、現場責任者(マネジャー)、育成担当者(OJTリーダー)、新入社員の「四位一体」での取り組みにすることです。

簡単に言うと、「誰か1人が責任を持って育てる」というより「皆で育てる」というスタンスを持つことです。とかくありがちなのは、育成担当者(OJTリーダー)なる先輩社員が、自身の業務を持ちながら、新入社員の指導・育成に当たり、1人で抱え込んでしまうケースです。上司はフォローすると言いながら、やっていることは、「大丈夫か?」と声をかけるだけ、人材育成部門は、フォローという名目で、新入社員本人と面談をし、「こんなこと言ってました。対応お願いします」とフィードバックするだけ。これではOJTを担う先輩社員と新入社員が共倒れになるリスクがどんどん高まってしまいます。あらゆる場面を想定して、その時の役割分担、育成進捗の共有方法、他のメンバーのバックアップの仕方、巻き込み方など、体制づくりは多岐に渡ります。

「念には念を、丁寧に!」が大事です。一見、面倒くさい、手間がかかるように思えますが、新入社員の育成にいろいろな人が関わることで、結果的に新入社員本人が多くの人との関係性を構築でき、安心できる居場所になります。すると、「職場=成長の場」として認識されるようになり、成長スピードが上がります。


3.OJTを担う先輩社員は、新入社員「成長の伴走者」たれ!

「成長の伴走者」とは、成長のパートナーとして新人に寄り添い、お互いに成長し合える人材のことです。新人の育成・指導における従来の発想・手法に固執せず、柔軟な関わり方で育成に関わる人のことです。

組織はますます多様性ある人材の集まりとなっていきます。世代や育った環境が異なれば、仕事に対する価値観も異なります。OJTを担う先輩社員やマネジャーは「自分が育った頃と今とは違うんだ」という前提で新人に関わる必要があります。

教える内容が以前と大差なかったとしても、教え方・関わり方は柔軟にしていきましょう。以下は、新入社員との関わり方3つのポイントです。

①新人と伴走する(スタンス)
「教える人 ― 教えられる人」という関係性にこだわらず、「一緒に成長していこう!」という関係性を大切に。

②新人を理解し、特性を活かす
新人をよく観察し、耳を傾け、理解する。その上で、成長に活かせる特性を見つけ、
特性に合った仕事の与え方・フォローの仕方を工夫する。

③コミュニケーションは指示・指導だけではなく、時には相談を
指示・指導のコミュニケーションは一方通行になりがちです。時には先輩社員の方から新人に相談を持ち掛けてみましょう。「~についてチャレンジしてみない?」「何か心配なことない?」「今の気持ち、遠慮なく聴かせてね」と明るく丁寧に声をかけてみてください。新人が難しいことにもチャレンジすると言った時は、気持ちを込めて感謝したり、一緒に喜んだりしてあげると、俄然頑張ってくれると思います。

OJTを担う先輩社員が、OJTリーダーとして機能するためには、新入社員の成長に伴走することの価値を、以下2つの観点からじっくり考えてみると良いでしょう。

自分(先輩社員)にとってのメリットは何か?
・・・新人の成長に伴走することは、自分の今後のキャリア形成にどう影響するか?

周囲にとっての貢献は何か?
・・・新人の成長に伴走することは、周囲(新人・上司・組織等)にどれだけ貢献するか?

以上、「新入社員との関わり方3つのポイント」「新入社員の成長に伴走することの2つの価値」は、OJTを担う先輩社員だけでなく、育成に関わる全ての人の共通認識にしておくことが重要です。


4.まとめ

今回は、2021年新入社員配属後OJTのポイントとして、研修を担当した実感情報をもとに、新入社員の傾向とその背景、彼らを受け入れ育成していく体制について、そして実際にOJTで関わる先輩社員がどのように新入社員と関わっていけば良いか、その要点をお伝えしました。

ある教育会社の調査によると、「新入社員が不安に思っていること」として、コロナ前との比較で、上昇率が一番高かったのが、「上司・先輩と上手くやっていけるか?」と「自分はこの会社で成長できるか?」でした。この不安を払拭する意味でも、成長を加速させる本来の目的という意味でも、今回お伝えした内容を御社ナイズして実践していただきたいと思います。

「コロナでたいへんな中、自分たちを指導・フォローしてくれている上司や先輩に少しでも貢献できるように! また、この会社でやりたかったことが実現できる自分に成長できるように!」と、新入社員は必死だと思います。

御社の新入社員が「この会社で、この人たちと働けて、素敵なお客様に貢献できる仕事に就けて良かった!」と実感できる日が来ることを願っています。

 

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ご精読いただき、ありがとうございました。

 

この記事の執筆者

人材・組織開発コンサルタント

橋本 良広

 

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