マネジメント / リーダーシップ

ミドルマネジャー起点の風土改革
~風土改革に寄与するマネジメント研修とは?~

「今なぜ風土改革か?」「“地に足の着いた”風土改革の進め方とは?」「風土改革につながるマネジメント研修とは?」「“やりっ放し”にしない研修の仕掛け方とは?」といったことについてお伝えします。「ミドルマネジャー起点の風土改革」にお役立ていただければ幸いです。


1.今なぜ、風土改革が着目されているのか?

コロナショックで先行き見通しが立てにくく、中期経営計画の発表を控える企業が多かった
のですが、ここに来て中計や2030年ビジョンを改めて打ち出す企業が増えてきました。

各社のホームページやIR情報で中計を見ていると価値創造、イノベーション、チャレンジ
というキーワードが頻繁に出てきます。収益計画(数値)や事業戦略だけでなく、風土改革や
人材育成について明記している企業も多い。

風土・人材という“目に見えない”ものを中計に盛り込んでいるのは興味深いところです。
どのような文脈で、風土・人材が注目を集めているのでしょうか?

そこで参考になるのが、2020年9月に経済産業省が発表したレポートです。
「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会報告書(通称:人材版 伊藤レポート)」
と呼ばれるものです。

研究会座長の伊藤邦雄氏(一橋大学 大学院 特任教授)は次のように述べています。

企業価値の源泉が製品・設備といった有形資産から、ブランド・人材といった無形資産へ
と移行している。日本では、企業価値を高める無形資産への投資が十分でなかった。
それが“失われた10年・20年”につながった。経営戦略と人事戦略を一致させる必要がある・・・。

興味のある方は、こちらをご覧ください。

https://www.meti.go.jp/shingikai/economy/kigyo_kachi_kojo/pdf/20200930_1.pdf

もう何十年も前から「企業は人なり」「人の成長があってこそ事業の成長がある」と言われて
いました。以前は耳障りのいいスローガン的なニュアンスがありましたが、最近は様子が違い
ます。「人が育ち、新たな発想が生み出され、チャレンジし易い風土」が備わっていなければ
投資家からも求職者からも人気のない会社になりかねないという危機感があるように思います。
 


2.経営計画の実現と風土改革はセットで

風土には諸説ありますが、私どもでは「組織に根付いた口グセ・考え方や行動のクセ」と定義
しています。
「クセ=長年の習慣でいつの間にかそうなっている。ついつい〇〇してしまう。しかもその
当事者は気づいていない」という意味合いです。こういう言い方は、経営者には実務的で扱い
やすいとおっしゃっていただいています。
今まで500社以上の法人(株式会社、社団法人、協同組合等)で研修・コンサルをして
きましたが、そこで感じる風土(クセ)の代表例は、次の4つです。

①「どうしましょうか」と上司に聞くクセ(依存)
② 与件の枠内で真面目にこなすクセ(高・規律性)
③ 失敗を避けるクセ(1勝9敗よりも、0勝0敗)
④ 横並び&様子見のクセ(「出る杭」にならない )

これらは、変化が緩やかで、過去の成功パターンが未来にも通用する時代には重宝された
クセです。しかしこの4つの傾向は、⇒の右側に記したような問題をはらんでいます。

①「どうしましょうか」と上司に聞くクセ(依存)⇒ 自分で考えることを放棄する
② 与件の枠内で真面目にこなすクセ(高・規律性) ⇒ 斬新なアイデアが湧きにくい
③ 失敗を避けるクセ(1勝9敗よりも、0勝0敗)⇒ チャレンジしにくい
④ 横並び&様子見のクセ(「出る杭」にならない )⇒ 革新が起きにくい

コロナショックで経営環境は一変しました。
中計も以前にも増して革新的な要素が盛り込まれていくと思います。にもかかわらず、
上記①②③④のクセを引きずっていたら、中計で描いた事業構想が「画に描いた餅」に
なってしまいます。
経営計画・事業戦略と風土改革・人材育成はセットで取り組む必要がますます高まって
いるということです。


3.“地に足の着いた”風土改革のアプローチ

風土というと、漠としていて、とらえどころがないように聞こえます。
そこで、“地に足の着いた”風土改革のアプローチをお伝えします。

職場単位で取り組む現場主導の風土改革

風土(クセ)は、部門や職場によって少しずつ違いがあります。「企業風土」という大きな
括りで考えると着手しにくいですが、「職場毎のクセ」という単位でとらえると、着手しや
すくなります。職場毎に自分たちの影響が及ぶ範囲でやるべきこと・やれることから始めれば
良いからです。

現場のミドルが風土改革のカギ

現場に最も大きな影響を与えるミドルマネジャーやチームリーダークラスが、風土改革のカギ
を握っています。
経営レベル・本部レベルでは、ビジョンや中計を打ち出す、人事評価制度を見直す、コミュニ
ケーションツールを導入する等の手を打てますが、「クセを直す」というレベルのことは、
現場のマネジャー・リーダーでなければできません。
「業績を上げること」「人材を育てること」にプラスして、「悪しきクセを直し、良きクセを
定着させること」も現場のマネジャー・リーダーが担うべき責任であるという自覚が必要です。

風土改革は3グセ改革

「風土=クセ」と述べましたが、噛み砕くと、クセは3つに分けられます。
「口グセ、思考グセ、行動グセ」の3つです。この3つのクセを直すことが、現場レベルでの
風土改革です。「風土改革は3グセ改革から」です。
下記は、ミドルマネジャーの3グセ改革の事例です。

今までの悪しきクセ 今後定着させたい良きクセ
口グセ それは難しいんじゃないかなぁ まず、やってみよう
思考グセ 何かあったら向こうから言ってくるだろう 自分から確かめにいかないとなぁ
行動グセ 部下から相談があったら、
すぐに「〇〇せよ」と指示する
部下から相談があったら、
「君はどう考えているの?」と問い返す

マネジャー曰く「自分のクセが、保守的で指示待ち傾向の強い職場風土を作り出していること
を痛感した」


4.マネジメント研修を風土改革に活用する

マネジメント&リーダーシップの“あり方”改革

風土を変えるには、マネジメント&リーダーシップの“あり方”を変える必要があります。
マネジャーの知識・経験をもとにメンバーに指示命令してやらせるスタイル(周知徹底)は
もう限界です。
メンバーの知恵と貢献意欲を引き出す“相談型”のマネジメントスタイル(衆知結集)への
シフトが必要です。「リーダーたるもの、何でもできなければならない」という思い込み
を捨て(肩の力を抜いて)、「メンバーの強みを活かして、自分の弱みを補ってもらう」
というスタイルへリーダーシップのあり方をシフトする必要があります。知ったかぶりを
したり、強がったりする必要はありません。失敗を恥じたり、失敗を罰したりするのでは
なく、失敗から学ぶように促せば良いのです。失敗≒上手く行かないやり方を発見した
(一歩前進)とポジティブにとらえれば良いのです。

経営計画にリンクした現場実務を題材に学習

経営者から「風土改革はカネばかりかかる。どれだけ経営成果につながるのか?」という声
を聞くことがあります。こういう疑念を払拭しないと、風土改革の取り組みを継続するのが
難しくなります(予算が続かない)。
そこで有効なのが、「経営計画にヒモづいた実務を題材に、マネジメントサイクルを回す」
という仕掛け方をすることです。こういった取り組みであれば、受講者も本気になるし、
経営陣の理解・賛同も得やすく、研修を継続実施することができます。
その継続実施を考えると、階層別の「管理職のマネジメント研修」「管理職手前のリーダー
シップ研修」と位置づけるのが得策です。
風土改革は一朝一夕には行かないので、ある程度の期間、続ける必要があります。続ける
には大義名分と成果への手応えが必要です。その点、経営計画にヒモづいた実務を題材に
研修を開催するのは賢明なやり方です。

「研修の展開」と「現場の動き」のループ学習

「研修と現場は別物」「研修で学んだことが現場で活かされない」「研修がやりっ放し」と
いう声を耳にします。
こういった問題を解消するのに有効なのが、「研修と現場のループ学習」という仕掛け方です。
「研修で本音の話し合いにより、より良い解決アイデアを産み出す」ことを体感したら、
まったく同じことを現場でメンバーと一緒にやってみる。現場でやってみたことを次の研修に
持ち寄り、受講者同志ぶっちゃけて話し合い、より良いアイデアを産み出す。そこでの体験を
現場でメンバーと一緒に再現してやってみる・・・ということを繰り返すのです。これは非常に
効果の高いやり方です。
以上、風土改革につながるマネジメント研修の仕掛け方の要点をお伝えしました。

風土改革につながるマネジメント研修について、私どもと、南山大学の土屋耕治准教授との
共同研修を行っています。その研究成果を紹介するセミナーを開催します。

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株式会社マネジメントパートナー

代表取締役 兼 人材・組織開発コンサルタント 廣田 文將

 

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