コミュニケーション

新入社員・若手社員の成長支援と定着促進 
~ 新人・若手が育つ環境は整っていますか? ~

9月・10月といえば、今年入社の新人をフォローしつつ、来春入社の新人の教育を
本格的に検討し始める時期かと思います。そこで本日は、「新人・若手の育成と定着」
に役立つ情報をお届けします。


1.はじめに

マイナビが発表した「2021年度 新入社員の意識調査:2021年6月実施、有効回答800名)」に
よれば、現会社を「3年以内に退職予定」は28.3%、「5年以内に退職予定」は42.7% でした。

5年以内に4割以上が辞めるつもりだということですが、一人前に育った頃には4割が辞めて
いるとしたら
会社としては痛手です。

最近の若手社員は、キャリア形成を急ぐ傾向があると言われています。

成長している実感や成長できそうな予感がないと、「このままこの組織に居続けていいのだ
ろうか?」と不安になり、焦りを感じ、その解消手段として転職を考えるのだそうです。

会社としては、「この会社で働き続けたい」と若手社員に思わせる魅力を高めていく必要が
あります。

その魅力は、成長実感・予感だけでなく、人間関係、貢献実感、労働条件(給与・残業・休日)等、
さまざまな要素がありますが、このレポートでは、成長にスポットを当てて述べていきます。

若年人口が減り続ける中、「採れない・育たない・居つかない、三重苦だ」とおっしゃる
人事担当者がいらっしゃいました。採るのが難しいのであれば、入社した人材を育て、長く
活躍してもらう環境を整えていきましょう。


2.新人・若手の特性を理解し共感する

新人・若手を育成する・長く働いてもらうための前提は、「最近の若者は〇〇だ」と勝手な
決めつけをしないことです。例えば「こらえ性が無くすぐ辞める」「スマホばかり触っている
からコミュニケーション力が弱い」等。

勝手な決めつけをしていると、新人・若手との間に溝ができ、歩み寄れず、適切な解決策も
出てきません。

まずは、新人・若手がどういう環境で生活しているのか? それ故どういう心理傾向がある
のかを知ることから始めましょう(マクロ的な理解 ー1)。

新人・若手の特性を理解する上で、押さえておきたいのは、SNS育ちだということです。

ツナグ働き方研究所の平賀充記所長は、『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』の中で、次の
ように述べています。

「SNSでヨコにつながる仲間コミュニティ」を基盤に「バリバリ目立つのは嫌だけど、認め
られたい」葛藤を抱え「意味や目的の分からない無駄な仕事はしたくない」というこだわり
を持っている。

SNSでつながるヨコ社会で生きる術として、若者は下記の特性を身に付けています。

□ 自分がどう見られているか分からない恐怖の中、炎上回避したく、過剰に忖度する
□ 他人から認められる自分でありたい、自分のことをかまってほしい欲求が強い
□ 目的次第で仲間とつながる、意味と目的が超重要、タテ社会の理不尽が大嫌い
□ デジタルツールを駆使し無駄を排除、時間の無駄が大嫌い、最短ルートでゴールしたい

SNSヨコ社会の処世術を身に付けた若者がどんどん増えていく、この流れは止めようが
ありません。

新人・若者を理解する2つ目は、
彼らがどういう教育を受けてきたかです(マクロ的な理解 ー2)。

子ども時代に「個性重視」の義務教育を受け、中学・高校時代からキャリア教育を受け、
就職活動では自己分析や将来目標設定を求められました。

その結果「自分らしさ」「やりたいこと」に強くこだわるようになりました。

自分の将来目標を早い時期から考えるのは素晴らしいことです。

ただし、早期キャリア教育の落とし穴もあります。

キャリアの8割は偶然に支配されるもの(クランボルツ博士の「計画された偶然理論」)
なのに、「私のやりたいことはこれ。私のキャリアビジョンはこれ。寄り道せず、最短
ルートで辿りつきたい」と生真面目に、頑なに考え過ぎると、かえって幸せな職業人生を
送れなくなりはしないか?

会社に入って働き始めると、学生時代に描いていた理想と現実とのギャップを感じるの
が普通です。ましてや、これだけ混沌とした世の中ですから、思い描いた通りにならない
ことの方が多いです。

キャリアについて先が見えない中、「このままではいけない」と焦りを感じ、「このまま
今の会社にいてはキャリアビジョンを実現できない」「自分らしく働ける会社が他にある
のではないか」と考えてしまう若手も少なからず出てくるのではないか?

向上心の強い真面目な新人・若手ほど、こんな葛藤を感じているかもしれません。


3.個別に関わり、持ち味を活かす

若者の特性を2つの側面(SNSでつながるヨコ社会、学校で受けてきた教育)から見てき
ました。マクロな視点から新人・若手の特性を理解しようという試みです。

次に、ミクロな視点の話をします。

ミクロとは、「最近の若者はSNS育ちだから~」「今年の新人は〇〇タイプらしいから~」
と十把ひとからげに見ず、新人・若手1人1人を個別に理解し、個性(持ち味)を活かす
いうことです。 

「新人・若手1人1人を個別に理解する」という点では、科学的なデータ(アセスメント)
を参考にするのも手です。仕事への興味や行動特性を測定するツールはいろいろあります。

例えば、自分の部下が、下記AorBどちらの特性を持った人物か分かれば、仕事の与え方や
出来映えの求め方も違ってきて然るべきです。

A:「じっくり丁寧に質の高い仕事をする」のが得意(フォーカス型:じっくり集中)
B:「複数の仕事を同時並行的にこなす」のが得意(マルチタスク型:広く素早く)

A特性の部下に、複数の仕事を同時に与えて短納期でアウトプットを要求する。
B特性の部下に、ひとつの仕事を時間をかけて高い完度度を要求する。

いずれの場合も、部下はストレスを感じ、仕事のパフォーマンスが上がりません。

このような指導ミスマッチ(特性に逆行する仕事のさせ方)が続くと、部下は仕事のミスが
増えたり、健康を害したりするかもしれません。また、「この仕事は自分には向いていない」
と思い込んだり、この上司の下では自分の特性(個性・持ち味)を発揮した仕事ができない
と思い、会社を辞めたいと言い出すかもしれません。

先ほどの指導ミスマッチの例を図で示すとこんな感じです。

印象・憶測・経験則頼みではなく、科学的な裏付けを持つことで指導ミスマッチを減らせま
す(このような指導ミスマッチを防ぐためのアセスメントに興味ある方はご相談ください)。


4.成長のモノサシを共有する

成長のモノサシとは、「いつまでに何ができるようになれば(=どういう状態になれば)
OKか?」を見える化(言語化)したものです。

「成長基準」「一人前ライン」「成長ステップ」「スキルマップ」等、いろいろな呼び名
があります。

新人・若手は「自分は今どこにいるんだろう?」「順調に成長できているんだろうか
(遅れていないだろうか)?」「次の成長テーマは何だろう?」ということが、分から
ないと不安になります。成長のモノサシがあると新人・若手の安心感につながります。

人事総務部が用意できるのは、テクニカルなものではなく、ビジネスパーソンとして
普遍的なものになると思います。
下記は「ビジネスパーソンの成長ステップ:入社から3年間」です。

(各部署では、専門的なスキルを加味して、より具体的な成長ステップをご検討ください)

このようなモノサシがないと、育成が場当たり的になりがちで、メンバー間で成長のバラつき
が出やすく、配属先の上司による当たり外れリスクが高くなります。

もし、貴社にこのようなモノサシがないようでしたら、早急に作ることをお奨めします(以前
作ったままで更新されていない場合は最新版にアップデートしてください)。

モノサシは、管理職/OJTリーダー(先輩社員)/新人・若手で共有し、日常の共通言語にして
ください。

新人・若手の早期育成に、成長のモノサシは不可欠なものです。


5.本質は「仕事の割り当て」とコミュニケーション

人の育成について本質的なお話をしますと、「大人は仕事の経験を通じて成長する」という
ことです。
つまり、どんな仕事を割り当てられるかが決定的に重要だということです。

「仕事の割り当て(アサイン)」は、マネジメントの根幹に関わることですが、仕事(業績
達成)の側面と人材育成の側面、両方の意図をもって部下に割り当てることが重要です。
「仕事の割り当て」を、「割り当てるための準備」「割り当てた後のフォロー」も含めて考
えてみます。

40代以上の世代は、新人・若手の頃、先輩・上司から「とにかくやってみろ、やってるうち
に意味は分かってくる。仕事とはそういうものだ」と言われ、理不尽さを感じながらも指示に
従ってきた経験があると思います。
ですが、最近の新人・若手に対して、こういうコミュニケーションはNGです。

「そんな非効率なこと、意味分かんない、時間を無駄に使わせるなんてパワハラだ」と言われ
てしまうかもしれません。

仕事を割り当てる時に、仕事の全体像、目的、手順、期待する出来映えをきちんと説明し、
疑問点は質問してもらって補足説明して、仕事のWhat/Why/Howを理解させる。さらに、
その仕事が、部下個人(you)にとってどういう意味があるか、その仕事を通じてどういう力
をつけてほしいかを説明して動機づける。
そういう丁寧なコミュニケーションが必要です(「割り当てる時」ー ⑤)。

「いちいち面倒臭いな」と思う人がいるかもしれません。
しかし、丁寧に説明しきちんと理解して取り組ませれば、部下の意欲は上がりますし、仕事
のやり直しも減って、結果的に指導の時間を短縮できます。

テレワークが進んで、直接対面でのコミュニケーションが減り、ビデオ会議システム(Zoom)
やチャットツール(Slack等)によるコミュニケーションが増えた職場が多いと思います。

デジタル・ネイティブの新人・若手でも、対面でのコミュニケーションを望むケースはまだ
まだ多く存在します。例えば、先輩に質問する、アドバイスをもらう、褒めてもらうといった
場面では、対面でのコミュニケーションが望まれています。

メールやチャットだけだと「3っ放し:任せっ放し、教えっ放し、質問されっ放し」に陥る
リスクが高いように思います(「割り当てた後フォロー」ー ⑦)。
Zoom等でお互いの顔を見ながら会話していると、忘れかけていたことを思い出すということ
は結構あります。また、文字情報だけでは「心の交流」は生まれにくく、部下の貢献意欲や
組織への愛着を高めるには限界があるようです。

Zoom等を使った短時間でのミーティングを定例化したり、部下の報告も文書だけでなく、
オンライン上で Face to Face で受けるようにする等、コミュニケーションの場づくり(設計)
が非常に重要になってきます。
こういったコミュニケーションの積み重ねが、新人・若手の成長や定着に効いてくるのです。

「3年(5年)で辞めるつもりだったけど、この仕事面白いから、もっとここで働き続けよう」
と若手に実感させるような指導・育成と環境整備を進めたいものです。

ただし、新人・若手を辞めさせないことが目的ではなく、戦力として成長してもらい、育った
社員に長く働き続けてもらうことが狙いです。

このレポートを、新人・若手の育成関係者で共有し、自社の課題についてディスカッション
するネタとしてご活用いただけると嬉しいです。

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