教育体系

教育体系設計のポイント④
~今後、社員のキャリア開発支援はどうあるべきか?~

社員の「キャリア自律」が求められる中、教育体系を設計する際に、社員のキャリア開発をどう支援するかを、十分に考慮することが求められています。教育体系を設計する上で、その支援をどう体系に盛り込み、またその体系が機能するためにどうすれば良いのかについて、そのポイントを考えていきます。

そもそもキャリアとは何か?

キャリアは、「経験」「経歴」という意味の言葉ですが、厚生労働省の資料によれば、キャリアとは、

  • 関連した職業経験の連鎖
  • 職業経験を通して、職業能力を蓄積していく過程の概念

であると述べられています。単に「どんな仕事に携わってきたか?」ではなく、その仕事によって「どのような能力を身につけてきたのか?」という点も含めて定義されているようです。

キャリア開発とは何か?

キャリア開発とは、
企業が社員のどのような職業能力を、どうやって開発していくか?
という中長期的で体系的な計画のことです。

一般的に、そのための「目標設定」や「診断」、あるいは「研修」や「人事事異動」、「昇格」等が体系的に組み込まれた施策のことを、「キャリア・ディベロップメント・プログラム」と呼びます。

今後のキャリア開発支援はどうあるべきか

長い間、キャリア開発は「企業が社員に対して行うもの」でした。企業が、永続的に存続し業績を上げ続けるために、キャリア・デベロップメント・プログラムを策定し、社員がそれに乗ってキャリアを重ねていけば、会社は発展し、日本全体が経済的にも大きく成長出来ました。

しかし現在、「終身雇用」や「年功序列」といった雇用システムが崩壊し始め、少子化による働き手の減少、働くことに対する価値観の多様化が進み、「キャリア開発は会社が社員に対して行うもの」という考え方から「キャリア開発は自分自身で行うもの」という考え方に変わる必要があるという見解が出てきています。

そして企業は、その社員主導のキャリア開発を「支援する」という立場を取るべきと言われるようになってきています。

企業が個人のキャリア開発を支援する上での問題

本来企業が社員個人のキャリア開発支援を行うと、企業にとっての「有用な人材の確保と定着」や「組織の活性化」などのメリットにつながると言われます。しかし実際には

  • キャリアデザイン研修を行なったら、研修後、この会社では自分のキャリア開発は出来ないという理由で、数人が退職してしまった

  • 教育を「カフェテリア形式」にし、その受講を本人の自由選択にしたら、会社としては、本人に受講して欲しい教育を受講してくれなくなった

  • 配置を決めるのに本人の希望を採り入れる制度を導入したが、社員の希望と部門の希望がなかなかマッチしない」

など、支援をした結果、本人はメリットを享受したが、会社はメリットを享受出来なかった・・・という問題が発生してきています。

社員・会社双方にメリットがあるキャリア開発支援をするには

前述のように、「企業が主導で進め、社員はそれについていく」といった、「会社による社員の“キャリア支配”と社員の会社への“キャリア依存”」では社員も会社も幸せになれない時代を迎え、キャリア開発自体が、「社員主体のキャリア開発を企業が支援する」という形に変わってきています。

そのために、様々な施策や制度を活用することはもちろん大切ですが、人事・教育担当部門が、社員と企業のどちらかの都合に偏った「キャリア開発支援」を行うのではなく、双方にメリットがある「キャリア開発支援」を行う必要があります。 そのためのキーポイントが、

社員の「キャリア形成支援」ではなく社員の「自律性向上支援」を行う

ことです。では、「自律性向上支援」とはいったいどういうことなのか?について、以下順を追って説明していきたいと思います。

まずは、従来から「キャリア形成」のために必須とされてきた、「キャリアビジョン創作」へのアンチテーゼとなった、シャインの提唱した「キャリアアンカー」と「キャリアサバイバル」について考え、「自律性」とは何なのか?について考え行きたいと思います。

キャリアアンカーとは

「キャリアアンカー」とは、アメリカの心理学者エドガー・シャインが提唱した、個人がキャリアを選択する際に、自分はこれだけはどうしても犠牲にできないという「価値観」「欲求」「動機」「能力」などのことです。「船の錨」(=アンカー:Anchor)のような役割を果たし、周囲の環境や年齢が変化しても、いったん形成されると変化しにくく、生涯にわたりその人の意思決定に大きな影響を与え続けるものであると言われています。

またシャインは、キャリアの方向性を決める時に「何を」ではなく「どのように」を突き詰めよとも言っています。

確かに、自分のキャリアの方向性を決めようという時に、自分は「何が」好きで、「何を」したくて、「何が」得意で、「何に」強いのかという「What」の部分を明らかにすることで「仕事」や「それを達成する策」が明らかになります。

しかし、現在自分が就いている「仕事」は、果たして永遠に続けられるのでしょうか?産業構造の変化などによって、仕事の需要が減る、もしくはその仕事自体がなくなってしまう可能性もあります。

さらに本人がキャリアを重ねていくにつれて、したい仕事自体が移り変わる事も考えられます。また組織内でのポジションが変われば、会社の意向でキャリア転換を求められることもあります。

つまり自分の人生を考えるとき、「やりたい仕事」(What)」は重要ではあるものの、それは環境の変化などで変わってしまいますが、「どのようにしたいか(How)」は環境がどう変化しても変わりません。これが、「キャリアンカー」をシャインが提唱した、重要な理由です。

今、「キャリアアンカー」が着目されるのはなぜか?

  • 人事異動・配置における失敗が命取り?になる時代だから
    現在は人材流動性が高く、また仕事に対する価値観も世代によりかなり異なっています。
    例えば、開発で高い成果を上げていた社員を、会社が営業職に配置を変えたとします。この社員の「キャリアアンカー」が「専門性を極める(シャインの8つの分類の1つ)」であるとすると、会社の配置転換の理由や意図の説明は、本人の耳にはなかなか届かず、よしんば営業職に異動しても成果が上がらない可能性があります。最悪は転職をするかもしれません。
    「キャリアアンカー」をまったく考慮しない配置転換は、優秀な社員のモチベーションを下げ、最悪は退職させかねないのです。

  • イノベーションを起こすチームワークを生み、それを維持したいから
    価値観が違うメンバー同士がチームで仕事を進める際、「私生活重視の社員」と「仕事重視の社員」では残業時間や休出等への考え方が正反対で、それがもとでトラブルが起き、チームワークが崩壊する・・・こういう事はよくあることです。
    異なる価値観を持つメンバーが集まったチームの方が、イノベーションが生まれやすいとは言うものの、そのためにはお互いの価値観をよく認識したうえで、仕事の進め方や規則を作らないと、チームワーク自体が出来ないということになりかねません。
    また、チームメンバー人選の段階でも、同じことが言え、そのような時には、各自が「キャリアアンカー」を明らかにし、それをお互いに共有することで、トラブルや問題解決につながると言われています。

以上の2つの大きな理由から、「キャリアアンカー」が今、着目されているわけですが、他にも、人事・教育・人材開発担当者が、より高い教育投資効果を得たいというニーズから、社員個々人の「キャリアアンカー」を知り、教育・研修の設計や実施に活かすといった事も、キャリアアンカーが着目される理由の1つです。

シャインの8種のアンカー(概要)と「キャリアサバイバル」

  1. 管理 
  2. 専門能力追及
  3. 安全・安定
  4. 起業家的創造
  5. 自律と独立
  6. 奉仕・社会貢献
  7. チャレンジ
  8. ライフバランス

さらに、シャインは「キャリアアンカー」とは車の両輪の関係にある「キャリアサバイバル」という概念も提唱しています。「キャリアサバイバル」とは、キャリアアンカーに加えて、現在の仕事をうまくやる、あるいは今後の環境変化に対応する視点から、キャリアを考えることです。

シャイン曰く、「キャリアアンカー」が「個人の要望」であるのに対し、「キャリアサバイバル」は「環境・組織からの要望」であると述べています。

環境や組織のニーズを理解し前向きにとらえ、自分の「キャリアンカー」とどのようにすり合わせていくかを、自分で定期的に考える事が出来るかが、モチベーションを高くもって仕事を続けていく上で大切なことであると、キャリア形成においての、What中心の「キャリデザイン創作」へのアンチテーゼを提唱しているのです。言い換えると、「社員の自律性向上の必要性」を提唱しているとも言えます。

次に、これもキャリア形成において、従来から重視されてきた、「キャリアデザイン」を新しい切り口で昇華させた、神戸大の金井氏による、「キャリアドリフト」という考え方についてみていきます。

なぜなら、今後は、社員自らがキャリア開発を行い、それを会社が支援する・・・その本質は、社員の「キャリア形成支援」ではなく「自律性向上支援」であるということを、前項では、シャインの考え方を切り口にして、「自律性向上とは何か?」にスポットを当てて述べてきました。

それだけでなく、金井氏の理論についても、みていくことで、「自律性向上支援」の「支援とはどういうことか?」についても考えることができるからです。

「キャリアデザイン」とは正反対の考え方である「キャリアドリフト」

「キャリアドリフト」とは、神戸大学の金井氏が述べた、変化の激しい時代は3年、5年先のキャリアデザインを行い、方向性を縛るのではなく、変化に適応し、偶然のチャンスを活かしてキャリアを作るべき、という考え方のことです。
※「ドリフト」=drift=漂流
つまり、周囲の環境の変化に合わせ、漂流するように身を任せてしまえ!ということです。

これは「キャリデザイン」、つまり、自分の経験やスキル、将来像に向けて、自らの能力を活かせる仕事の形成を進めていくとは、正反対の考え方です。

一見すると「キャリアデザイン」は主体的で、「キャリアドリフト」は流されるまま・・・のように見えます。(ちなみに金井教授は「ドリフト」「デザイン」双方の必要性を提唱されています)

「主体的な働き方」が求められる時代に、いったいなぜ、「流されるまま」・・・という「キャリアドリフト」という考え方が提唱されたのでしょうか?

安定が約束されない時代

約束された経済の発展(右肩上がりの経済)をベースにしていた、企業の終身雇用制度が綻びを見せる中、会社に頼らず自分のキャリアを自分で考え作っていくことが大切なのは、今誰もが身に染みて感じていることだと思います。

しかし、今の時代技術革新が目覚ましく、たった3年で世の中の構造が大きく変わってしまうことも珍しくありません。

その中で3年、5年後のましてや10年、20年後のキャリアを計画しても、考えだにしなかった技術の進歩によって、仕事そのものが大きく変わり、キャリアが断絶されてしまうということは十分に考えられます。

また、変化が常態化すると「いったい自分はこの先、何をしたいのか?」がわからないので、キャリアなんて計画出来ないという人も多いはずです。

こんな時代環境だからこそ、「キャリアドリフト」という考え方が大切になってくるのです。自分が予想しなかった出来事、たとえマイナスに思えるような出来事も、それを「どう次に活かしていくのか?」いう視点で考えられるというのが「キャリアドリフト」です。

「キャリアドリフト」は、ただ何が起こるか分からないので、何も考えずに、日々漂流するということではなく、起こる変化を主体的に楽しみながら、流れに身を任せるようにキャリアを過ごしていき、自分の可能性を広げていくという考え方なのです。

では、ここからは、「起こる変化を主体的に楽しみながら仕事をする」とは具体的にはどうすることなのか?を、考えていきたいと思います。

スティーブ・ジョブズと「キャリアドリフト」

アップル創始者の一人であるスティーブ・ジョブズは、過去スタンフォード大で「Connecting the Dots(点をつなぐこと)」 というテーマで、下記のようなスピーチをしました。

「先を見越して点をつなぐことはできない。振り返ってつなぐことしかできない。だから将来何かの形で点がつながると信じなければならない。何かを信じなければならない。直感、運命、人生、カルマ、その他何でも。この手法が私を裏切ったことは一度もなく、私の人生に大きな違いをもたらした。」

このスピーチは、ジョブズ自身が、「面白そう」だからと専攻した、大学の「文字芸術」の授業で学んだことが、10年後の「マッキントッシュ」の設計に活きた・・・というエピソードをもとに語られたものです。

要するに、ジョブズは、マッキントッシュを設計することを見越して「文字芸術」を専攻したわけではなく、この経験があったので、結果的に、マッキントッシュは文字を美しく表示し印刷できる、世界最初のPCになったと語っているのです。

さらに、ジョブズは、
「私が大学に居た時に先を見越して点をつなぐことは不可能だった。しかし10年後に振り返ると、とても明白だった。」
とも語っていて、この話にこそ、「キャリアドリフトとは具体的にどうすることか?」が明確に示されていると思います。

つまり、先のことはわからない。だから無理にキャリアを探したり、キャリアを決めたりせず、「その場で信じたものに真剣に取り組む」・・・これが「キャリアドリフト」だということです。するとそれが何年後、何十年後かで振り返った時に、自分の中で大きな意味を持つものになっているというわけです。

では「キャリアドリフト」の考え方は、実際に企業の中で、個人はどうように活用すれば良いのでしょうか?また、個人の「キャリアドリフト」を会社はどう支援すれば良いのでしょうか?

キャリアドリフトの考え方を個人はどう活かすのか?

人が、企業で仕事をしていれば、短期的な目標の達成や成果の捻出も、当然必要なことですが、これに囚わり過ぎると、その結果次第で、モチベーションが左右され、環境変化に対する柔軟さが失われていきます。

また、人は、そのような短期的な発想のままでは、人事異動や配置転換、転勤といった組織の中・長期的な施策に対して、「積み上げてきたものがご破算になり、また始めからやり直しだ」とネガティブな気持ちを持ってしまうことも予想されます。

「キャリアドリフト」は、このような短期的発想ではなく、例えば「マネジメントを極める」「専門性を磨く」などの主体的な中・長期的なゴール(=シャインのキャリアアンカーにも通ずる)を、自分で設定し日々の仕事をそれと関連付けて取り組むことです。

その結果、個人の成果がより良く達成されるだけでなく、短期的発想に囚われ、環境変化にモチベーションが左右されることも無くなります。

また人事部門としても、こうした各自が設定している中・長期的ゴールを把握していれば、各従業員が望む方向と組織の必要性を鑑みた人材配置が可能となる・・・と言いたいところですが、こればかりは、そう簡単にはいかないと思います。

しかし、例え社員の望む方向に応えられないケースでも、「キャリアドリフト」により、個人の主体性が増すことから、人事部門が社員に行うモチベーションアップの施策やアクションも減らすことができ、人材育成のための投資効果も良くなるはずです。

しかしながら、「キャリアドリフト」の考え方が、すんなりと企業の中で活かされるかというと、そこにはいくつかの課題があります。そこに、このキャリドリフト、つまり個人の自律性向上への支援をどうするか?のヒントがあるのです。

企業が個人の「キャリアドリフト」(自律性向上)を支援する上での課題

従来からある「目標管理制度」の持つ課題

キャリアの研究者の中には、昨今、「キャリア自律」(社員の自律性向上)の必要性が増しているが、従来の人事システムが、「社員の依存性」を助長してきたとすると、キャリア自律の時代においては、従来の人事システムで残すものは何もないと言っている人が多くいます。

しかしこの主張は、「人事制度によって人間の心の姿勢(依存性や自律性)」は決定されるという“環境的決定論”に立脚しており、「どんな環境変化も受け止める」という「キャリアドラフト」の考え方とは対極のものです。

真の課題は研究者の言っていることではなく、果たして、現場で働く人たちが「どんな環境変化も受け止める」という「キャリア自律」をしているのか?今後出来るのか?という点です。そうでないと、研究者の言っている通りになってしまうからです。

多くの企業に人事制度が存在するのは事実であり、それがこれら研究者の言うようにすべて廃止とはならないはずです。他にも、必ずしも個人の意向には沿わない、ルールや意思決定は、組織である以上無くなりません。よって、社員が自律しない限り、この課題は決して解決しません。

組織のための教育体系ではなく、社員を自律させるための教育体系で、その支援をどう行うか?が、今企業に問われている、自律性支援のための、一番大きな課題です。

ミドルマネジメントの課題

東大の高橋伸夫氏は、高度成長期の企業調査分析の中で、「健全な組織は、上司の権威など屁とも思わない部下と、そういう元気のいい部下を頼もしく思う上司から成り立っている。そこに、日本企業の本当の強さの秘密が隠されている。」と述べています。

すべての企業組織がこのような健全なものであれば、「キャリアドリフト」の浸透には、何の問題もありません。しかし、多くの組織では、マネジメントの改善が遅れ、「部下の自律性」を阻害するようなマネジメントが、未だに多く存在しています。これではいくら部下が自律しようとしても、依存性を助長することにしかならず、「キャリアドリフト」という主体的な考え方、つまり、自律性は促進されません。

部下の自律性を促すマネジメントができるミドルマネジャーを、輩出する教育体系が機能するかどうか?が、企業が社員の自律性向上を支援する上での、もうひとつの大きな課題です。

キャリア開発支援は社員の「キャリア形成支援」でなく「自律性向上支援」

現状、世間で「キャリア自律」の必要性が喧伝される中、それまであまり関心のなかった現場の社員も、厳しい経営状況により、企業の存続あるいは雇用の継続は保証されたものではない、という事に改めて気づき始めています。まさに、「キャリア自律」の必要性に目覚め始めているのです。

また、会社も、社員の主体性発揮は、今後の事業の継続・発展に向け、特に創造性発揮という面から、重要な経営課題と捉え、「キャリア自律」を人材育成の最重要性課題と、認識し始めています。

従って、多くの会社は、今までのような「キャリア支配」、会社の敷いたキャリアというレールに社員を載せてキャリアを開発するという考え方から、社員のキャリア開発を支援するという考え方に切り替えて、その施策を打ち始めたところです。

しかし、多くの会社は、「社員のキャリア開発を支援すること=社員のキャリ形成を支援すること」と捉えがちで、結果、支援すればするほど、退職者が出たり、やる気を無くしたりという、個人、会社双方にメリットがある、キャリア開発支援を、実現できていないのが現状です。

そうなってしまうのは、「キャリア自律」の本質が「キャリア」ではなく「自律」にこそあることを、理解できていないからなのです。

キャリアそのものは、どんなにデザインしても、ビジョンにしても、シャインの「キャリアサバイバル」という指摘通り、これからの時代、まずますその通りにはいきません。

そして、こうした「キャリア形成」の支援を会社がすればするほど、その通りにいかなったとき、個人はキャリア形成の無意味さを知るだけでなく、挫折感からモチベーションを落としてしまう可能性が高いのです。

たとえ、「キャリア形成」で、現状の会社からの転職を決意出来ても、次の職場においても、このことはまったく同じ現実として、本人に降りかかります。こう考えると、これからのキャリア開発とは、「キャリア形成」をすることではなく、また会社もそれを支援することではありません。シャインの「キャリアンカー」や金井氏の「キャリアドリフト」の指摘にあるように、まず個人がその「自律性を発揮する」ことです。

つまり、環境や外界の事実によって、やる気が左右される外発的動機で仕事をするのではなく、内発的動機に基づき、目の前の仕事に集中して取り組めるようになることなのです。

この事が、「キャリア自律」の本質であり、その積み重ねが、結果的に納得性のある本人のキャリア形成につながる・・・ということに、いち早く多くの人が気づくべきなのです。

また、その集中力の高さが、創造性の発揮に繋がり、個人にとっても会社にとっても重要な、「仕事の成果」へと繋がっていきます。ですから、社員の自律性発揮を支援することは、今後、戦略的な経営を迫られる会社にとっての、重要な経営課題になるといっても過言ではありません。

特に、会社が個人の自律性発揮を支援する教育体系の設計においては、

  • 「キャリアアンカー」を各自に問い、継続して自律的に働くことができるようにするための教育

  • ミドルマネジャーが、メンバーの自律性を阻害せず、リーダーとしての自分のキャリア形成と自律型組織を実現できるようにするための教育
    ※ポジショナルパワー(権限)依存から脱却させ、ミドルのパーソナル・パワーを開発する

の2つを、どう体系に取り組込むべきかが大きな課題です。また、教育体系と併せて、自律性を阻害するような、制度や仕組みを出来るだけ排除し、改善することも、会社として行うべき重要な課題です。

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